相馬の伝説



    歯形の栗     



 女の子が歯をあてた栗は、やがて芽を
出し、豊かな実をつける大木になった...


  【浪江町・大堀の栗の木】
 浪江町大堀の共同墓地には、樹齢500年にはなろうという栗の大木があります。秋になると実がいっぱいなり、熟して落ちてきますが、その栗の実のどれをとっても、1つずつ歯形がついています。

 むかし、この里に「あき」という10歳位の女の子がいました。かわいそうに半年も病気で床についたまま、いよいよだめだと言う時が来ました。そのいまわのきわになって、急に「あき」は生栗が食べたいと言い出したのです。ちょうど初夏の頃で、栗の実などはどこにもなく、親たちは途方に暮れてしまいましたが、死んでゆく娘の願いはなんとしてもきいてやりたい、その一心で山中をさがし歩き、とうとう一本の栗の木の下に、土に埋まっていた栗の実をみつけました。急いで家に持って帰り、「あき」の細い手に握らせてやると、うれしそうに栗の実に歯をあて、そのまま息をひきとってしまいました。親たちは悲しみに暮れながら、「あき」のなきがらとともに栗の実を棺に入れてほうむりました。
 それから幾年かたちました。栗はいつの間にか緑の芽を出し、ついには今のような大木になったのです。そして、不思議なことに、どの実にも必ず一つずつ歯形がついています。けれども、この栗の苗木を他の土地に植えてみても、歯形のある栗の実はならないのです。

 


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2002/05/19 2:28:08