相馬の伝説
歯形の栗 女の子が歯をあてた栗は、やがて芽を 出し、豊かな実をつける大木になった... 【浪江町・大堀の栗の木】 |
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むかし、この里に「あき」という10歳位の女の子がいました。かわいそうに半年も病気で床についたまま、いよいよだめだと言う時が来ました。そのいまわのきわになって、急に「あき」は生栗が食べたいと言い出したのです。ちょうど初夏の頃で、栗の実などはどこにもなく、親たちは途方に暮れてしまいましたが、死んでゆく娘の願いはなんとしてもきいてやりたい、その一心で山中をさがし歩き、とうとう一本の栗の木の下に、土に埋まっていた栗の実をみつけました。急いで家に持って帰り、「あき」の細い手に握らせてやると、うれしそうに栗の実に歯をあて、そのまま息をひきとってしまいました。親たちは悲しみに暮れながら、「あき」のなきがらとともに栗の実を棺に入れてほうむりました。 それから幾年かたちました。栗はいつの間にか緑の芽を出し、ついには今のような大木になったのです。そして、不思議なことに、どの実にも必ず一つずつ歯形がついています。けれども、この栗の苗木を他の土地に植えてみても、歯形のある栗の実はならないのです。 |