相馬の伝説



    沈む日を        
  よびもどした長者



 金の扇がキラリとひらめくと、夕日は
するすると山の端をはなれ…


  【大熊町・夫沢・長者屋敷跡】
扇
今はその跡形もない長者原(長者屋敷跡)
 むかしむかしのことです。大熊町夫沢に大変豪勢に暮らしている長者がありました。家屋敷はもちろん、広い田畑を持っていましたから、田植えの時期になると大勢の人々を集めて、それはそれはにぎやかに仕事をさせました。

 ある年の田植えの時のことです。例年のようにたくさんの人々が総出で働いて、もう少しで全部の田が植え終るという時、ちょうど日が西の山に沈みそうになりました。これを見ていた長者は、ここで日が暮れては残念なことだといって、手に持った金の扇で沈みかけた夕日をあおいで招き寄せました。
 すると、どうでしょう。夕日はするすると山の端をはなれて、ふたたび高く空に昇っていったのです。こうして、長者の家の田植えは無事、その日のうちに終ったということです。
 けれども、富にまかせた心おごりはやはり神仏の怒りにふれたのでしょうか。そのあと、ガタガタと家運が傾いて、長者の家は没落してしまいました。今は、長者の屋敷があった跡が、わずかにその豪勢な暮らしぶりをとどめているばかり。草地におおわれたこのあたりを、長者原と呼んでいます。                (終)

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2001/11/18 1:52:39