相馬の伝説
沈む日を よびもどした長者 金の扇がキラリとひらめくと、夕日は するすると山の端をはなれ… 【大熊町・夫沢・長者屋敷跡】 |
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ある年の田植えの時のことです。例年のようにたくさんの人々が総出で働いて、もう少しで全部の田が植え終るという時、ちょうど日が西の山に沈みそうになりました。これを見ていた長者は、ここで日が暮れては残念なことだといって、手に持った金の扇で沈みかけた夕日をあおいで招き寄せました。 すると、どうでしょう。夕日はするすると山の端をはなれて、ふたたび高く空に昇っていったのです。こうして、長者の家の田植えは無事、その日のうちに終ったということです。 けれども、富にまかせた心おごりはやはり神仏の怒りにふれたのでしょうか。そのあと、ガタガタと家運が傾いて、長者の家は没落してしまいました。今は、長者の屋敷があった跡が、わずかにその豪勢な暮らしぶりをとどめているばかり。草地におおわれたこのあたりを、長者原と呼んでいます。 (終) |